まるで月のように
おはようございます!
仕事が忙しく最近睡魔に襲われて中々SSが進みません花愛です。
6月半ばには落ち着いてくるはず…
そんな中応援メッセージを頂いたりして一人喜んでいました♪

このSSはある方のお誕生日リクで幼稚園の夕鈴ちゃんと黎翔君のイラストからSSを書かせて頂きました (*´-`*)
最初に思いついたネタはあまりに長くなりそうで…。何度も書き直してこのようにおさまりました。
けど本当はまだ色々書きたかった(´・ω・`;)

それでは許可を頂いていませんのでssだけアップさせてもらいますm(..)m

*現パロの幼馴染設定ですが、よろしければどうぞ~



「れいしょうくーん」

 いつものようにお母さんと手を繋いで幼稚園に向かっていると、同じクラスの黎翔君を見つける。
 早く会えた事が嬉しくて、思わず手を離し名前を呼びながら駆け出した。後ろからお母さんが「ちゃんと周りを見てね」って叫んでたけど、黎翔君も嬉しそうな笑顔を浮かべていたから夢中で走った。

「おはよう! れいしょうくんもいっしょに行こっ」
「うんっ」

 二人で手を繋ぎ歩き出すと、お母さんも追いついて来て黎翔君のお母さんに声を掛ける。

「おはようございます。朝から騒がしくてすみません。夕鈴も、ちゃんと挨拶したの?」
「れいしょうくんのお母さんおはよう」
「おはよう夕鈴ちゃん」

 そう言われて初めて挨拶をすると、黎翔君のお母さんは笑顔で返してくれる。だけどその目は笑っていなかった。
 黎翔君のお母さんはとても綺麗な人だけど、口数の少ないどこか影のある人だった。そのせいか黎翔君も大人しく、幼稚園に入るまであまり外で遊んだ事がなかったらしい。
 私はもっと沢山の楽しい事を知って欲しくて、事あるごとに外遊びに誘っていた。

「あ、わたげがあるよ! れいしょうくん、いっしょに飛ばそう」
「うん! 飛ばそう」

 最初は草を触るのも戸惑っていた黎翔君も、今ではすっかり慣れっこになっていた。
 白い綿毛になったタンポポを一本ずつ手に取ると、同時に息を吹きかける。二人で飛ばした綿毛はふわふわと空に舞い、混ざり合って飛んでいった。

「すごい、二人のわたげがいっしょになってきれいね。もう一回しようか」
「二人共、そろそろ行かないと遅刻するわよ」

 次の綿毛を手に取ろうとした所でお母さんに止められる。まだやりたかったけど、幼稚園でも楽しいことは沢山あると諦めた。

「れいしょうくん、早くいってゆうぐで遊ぼう」
「そうだね」

 二人で手を取り合い幼稚園に向かって駆け出すと、後ろからお母さんが声を張り上げている。

「危ないわよ、転ばないように気をつけてねー」
「はーいっ」

 返事をしながら振り返るとにこやかなお母さんと、不安げな黎翔君のお母さんの姿があった。



「せんせい、今日はれいしょうくんは?」
「黎翔君はね、お熱が出たからお休みするんだって。早く元気になるといいね」

 ある日いつものように幼稚園に行くと、黎翔君の姿がなかった。先生に尋ねると
そんな答えがかえってくる。
 他の子が遊びに誘ってくれたけど、黎翔君がいないと一日ずっと寂しかった。


「れいしょうくん今日おやすみだったの」

 迎えに来たお母さんと手を繋ぎ、今日の事を話しながら歩く。言いながらまた寂しさが込み上げてきて、半べそをかいた。

「お母さん、れいしょうくんあしたは来れる?」
「どうかしら……。そうだ、黎翔君が早く良くなりますようにってお祈りして帰ろうか」

 お母さんに問い掛けると少し困った顔をしたけど、帰りに神社に連れて行ってくれた。

「ここにお金を入れて、早く良くなりますようにってお祈りするのよ」

 お母さんの真似をして手を合わせ、黎翔君が早く元気になって遊べるようにお願いする。
(これで明日は会えるかな?)

 だけど黎翔君は次の日もその次の日も来なかった。

「黎翔君はお家の事情で引っ越したんだって。夕鈴ちゃんずっと待ってたのにね」

 先生に告げられた事実は信じたくないけど現実だった。そのまま黎翔君は姿を見せる事無くいなくなり、私は寂しくて悲しくて泣き続けた――


 「懐かしい夢ね……」

 目を開けると見慣れた天井が目に入り、部屋にアラーム音が鳴り響いている。十年以上前の記憶はおぼろげになりつつあったのに、こんなにはっきりと夢に見るとは思わなかった。
 そのまま昔を懐かしんでいたかったが、そういうわけにもいかない。

「今日から高校生活の始まりよ! 気合入れなくちゃ」

 勢いよく体を起こし立ち上がり、今は亡き母の代わりに台所に向かった。



「ねえ、祝辞って何でこんなに苦痛なのかな? つまらないわ」

 支度を終えた夕鈴は高校へ向かい、入学式に出席していた。長い祝辞の途中で、隣に座る幼馴染の明玉が小声で話し掛けてくる。確かに長くて苦痛ではあるが、式の最中に無駄話をしていて目を付けられても困ると懸命になだめた。

「駄目よ、黙って聞かなくちゃ」
「あーあ、あれがイケメンだったら良かったのに」

 明玉はブツブツと不満を零し、小声で宥めているとようやく長かった祝辞が終わる。
 ホッと胸を撫で下ろした所で、司会者が懐かしい名前を読み上げた。

「新入生代表挨拶。珀 黎翔」

 驚き顔を上げると、ざわつく会場の中一人の男が壇上に上がりこちらを向く。
 その顔は今朝夢に見た黎翔君で、昔の面影を残しながら美しく成長した姿に胸が高鳴った。
 だけど記憶にある黎翔君は大人しくて、こんな風に人前で話すなど考えられなかった。
(会えない間に変わったのかな?)

 そう考えていると明玉に袖を引かれ、小声で話し掛けられる。

「ねえ、あれ黎翔君じゃない? 元々可愛い顔してたけど、イケメンになったわね」
「うん……やっぱり黎翔君だよね」

 目を付けられないようにしていたことも忘れ、ひそひそと話し合う。自分の思い違いではなくてよかったと喜び、後で会いに行こうと決めた。
 

「どう?」
「いた、けど……」

 式が終わりクラス分けを確認すると、黎翔君は隣のクラスになっていた。だからHRが終了して直ぐ隣のクラスを覗く。
 なのに……視線の先には女の子に囲まれ、笑顔を向ける黎翔君の姿があった。

「あらー、やっぱりモテモテね」
「うん。やっぱりまた今度にしようか?」

 明玉の言葉に相槌を打ち、今日は無理そうだと思い日を改めようと提案した。すると彼はこちらに気付くと、周りの子に何か言い席を立つとこちらに向かって来る。

「夕鈴ちゃんと明玉ちゃん。久しぶり」

 そう言って笑った黎翔君の笑顔は、昔のままでどこかホッとした。そのまま場所を変えると、三人で語り合い昔を懐かしんだ。

 翌日からは度々会って話すようになった。だけど幼稚園時代に比べて活発になった彼の人気は凄くて、私と明玉は度々妬まれる。でもそんな事を気にする私達ではなかった。

「あ、黎翔君がまたプレゼント貰ってる」
「いつも笑顔で受け取って……たまにはいらないって断ればいいのにね」

 渡り廊下を歩いていると、校舎の影で彼が女子生徒からプレゼントを貰っているのが見えた。思わず声に出すと、明玉もその様子を覗きこみ呆れたように呟く。

「優しい所は変わってないのね」

 昔の面影が時々垣間見えて、その度に温かい気持ちになる。彼を見つめていると、後ろから視線を感じた。
 振り向くと何か言いたげな明玉と目が合う。

「どうしたの?」
「ううん、何でも無いわよ。それより早く行こう」

 訝しげな視線を送ると、明玉は笑顔で話を逸らした。いつまでもここにいるわけにもいかず、追求することは諦め次の教室に向かった。


 授業が終わりお昼を告げるチャイムが校内に響き渡る。教室はザワザワと騒がしくなり、皆好き好きに席を移動しグループにわかれていった。

「今日は天気もいいし外で食べようよ」

 明玉の提案に賛同し、二人で校庭に出ると木陰を見付けそこに腰を下ろす。
 その時彼の声が聞こえた気がして、そちらに視線を向けると彼と養護教諭が裏庭の方に向かって行く。何だかその彼の雰囲気はいつもと違って見えて、少し恐ろしく思えた。

「ごめん! ちょっと荷物見てて、先に食べてていいから」
「えっ、ちょっと夕鈴どうしたの?」

 どうしてもさっきの彼の様子が気になり、それだけ言い残すと後を追う。
 やがて二人の姿を見失い、辺りを見回しながら歩くと話をしている二人を見付けた。声を掛けようとすると、突然彼は今日女子生徒に貰ったプレゼントを焼却炉に投げ込む。
 折角貰ったものを! と注意しようと思ったが、彼の纏う雰囲気と初めて聞く冷たい声に息を呑んだ。

「やはり嫌がらせか」
「まだ貴方を好ましく思わない輩がいるようですね」

 養護教諭はそう言うとため息をつき、眼鏡をかけなおす。
(何で生徒に敬語なのかしら)
 
 立ち聞きが良くないのは分かっているが、色々と謎の多い彼の事を知れるチャンスとそのまま覗き見ることにした。

「直接危害を加えるのは無理だと分かれば、次は貴方が仲良くしている二人に矛先が向くでしょうね」
「あの二人なら問題ない。それより李順……」

(問題ないって、どうでもいいって事?)
 彼のその言葉にショックを受ける。先程のプレゼントの事といい、もう昔の優しい彼はいなくなってしまったのだろうか。
 そう考えると信じていただけに悲しくて、思わず彼に向かって叫んでいた。

「黎翔君のばかっ!! 優しい所は変わってないと思ったのに……女の子に貰ったプレゼントは捨てるし、私達の事も……っ」

 本当はもうどうでもいいと思っていたの? と問いたかったが、涙が込み上げてきてそのまま駆け出す。

「夕鈴っ」

 後ろから彼が呼ぶ声が聞こえたけど、振り向く事無く走り続けた。

「きゃあっ」

 目の前が涙で視界が滲み何かに躓いて盛大に転ぶ。慌てて立ち上がろうとすると、膝がズキンと痛んだ。

「夕鈴。大丈夫? 膝から血が出てる」
「大丈夫だから放っておいてっ」

 すぐに追いついた彼は心配そうに声を掛けてくける。だけど今は素直になれなかった。

「きみだいじ、へんこう、これと」

 そう言って彼は片手で私の膝を優しく擦り、反対の手で自分の膝を擦る。それは昔二人でよくやりあった、怪我の早く直るおまじないだった。

「それ……」
「昔は夕鈴がよくやってくれたよね」

 まだ覚えてくれていた事実に驚きを隠せずにいると、彼はニコニコと笑っている。その様子は昔と何も換わらなく見えて、膝の痛みも忘れただ彼を見つめ続けた。

「とりあえず保健室に行こうか。そこで少し説明するよ」

 彼は何も言わない私を抱え上げると、保健室に向かい歩き始める。私は恥ずかしさもあり、胸に顔をうずめ体を預けていた。
 道中騒がしかった気もするが、今はそれどころではなかった。


「このくらいの傷で大げさですね。一人で勘違いして走って行って怪我ですか?」
「すみません……」
「李順。彼女はけが人だそんなに責めるな」

 保健室まで運ばれた私は何故か養護教諭から嫌味を言われながら治療を受けていた。思わず謝ると、彼は命令口調で庇ってくれる。
 だけどその異様な光景を不思議に思いながら眺めていると、その様子に気付いた彼が説明を始めた。

「ごめん説明するって言ったよね。李順は僕のお目付け役なんだ。話せば長くなるんだけどね――」

 そこから自分の父親は白陽グループの社長で、母親はその愛人だった事。本妻に子が出来ない為跡継ぎとして連れ戻された事。色々な事を淡々と話してくれた。
 彼が変わってしまった事を寂しく思ったが、その話を聞いていると仕方の無いことだったのだろうと思える。そんな事を考えていると再び涙が頬を伝いはじめた。

「泣かなくていいよ。君と会えない日々は辛かったけど、今は再会できたから幸せだよ」

 そういって微笑む彼は優しく涙を拭ってくれた。優しさはやっぱり変わっていないように感じる。
 だけど先程の光景を思い出すと、あの行動は正さなければならないと詰め寄った。

「事情は分かったけど女の子に貰った物を捨てるのは駄目よ! どうしてあんなことしたの?」
「あれは僕を気に入らない者からの嫌がらせだったから……」
「どうして分かるの? それなら受け取らなければいいでしょう?」

 反論は認めないとばかりに責め続けていると、最初はたじたじだった彼が突然笑い出す。何事かと様子をうかがっていたが暫く笑い続けていた。

「もう、何がおかしいの?」
「いや、夕鈴は変わらないなって思って。今はそんな事で怒ってくれるのは君だけだから」

 私は怒っているのにと、腹が立ってきて声を掛ける。すると少し落ち着いた彼はそう言って嬉しそうに私を見つめた。
 いつまでも見られていると恥ずかしくなってきて、彼に背を向けると後ろからそっと抱きしめられる。

「なっ」
「夕鈴、これからもずっと君に傍に居て欲しい。僕と付き合ってくれる?」
「……うん」

 驚き振り解こうとしたけど、しっかりと捕まっていて逃げられない。そのまま耳元で囁かれた思いがけない告白に、戸惑いながらもやっとの事で返事をした。
 ドキドキしながら幸せを噛み締めていると、後ろから咳払いが聞こえ声を掛けられる。

「お取り込み中すみませんが、お昼休憩も終わります。そろそろ教室に戻って下さい」
「李順、いい所で邪魔をするな……」
「あ、明玉の事忘れてたっ! ごめん黎翔君また後でねっ」

 その声に現実に戻り、明玉を一人で置いてきた事を思い出す。不満を漏らす彼の腕から逃れると、明玉の待つ校庭に駆け出した。


「逃げられましたね」
「まあいい。夕鈴を抱いて人通りの多い道を選んで歩いておいたからな。もう彼女を口説く輩はいないだろう」

 夕鈴の去った保健室ではそう言ってニヤリと笑う黎翔と、呆れ顔の李順の姿があった。

おわり
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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