自分で視たもの聴いたもの 前編
こんばんは~ (*´-`*)

今日はSNSの方で贈らせていただいたBDリクを転載させてもらいます!
リクは夕鈴が五大家のどこかにさらわれたら?でした。

このお話には本誌の新キャラが出てきます!
本誌読まれていない方は想像しにくいかもしれません(´・ω・`;)
夕鈴の過去も捏造し、新キャラも未だ役割が分からないからこそ好きに書いています!

それでもよろしければどうぞ~
「――りん。――うりん。夕鈴起きなさい」

 誰かの呼び声が聞こえる……でもこの眠りが心地よくて起きたくないの……

「夕鈴!」


「ん……寒い」

 誰かに呼ばれた気がして目を覚ますと、寝台ではなく硬く冷たい床に転がっていた。何処かでピチョンピチョンと水の落ちる音が聞こえ、先程の声はこの音だったのだろうかと辺りを見回す。そこは真っ暗で何も見えなく、水音だけが響いていた。
 何が起こったのか分からず戸惑っていたが、凍えそうな寒さに呆けた頭がはっきりしてくる。確か昨夜は陛下がお忙しくて一人でお茶を飲み、寝台に横になったはずだった。

「状況的から考えると、寝ている間に攫われたって事よね」

 幸い口は自由だったが、そうであればここで叫ぶのは得策ではない気がする。もう一度周りに目を向けると、暗闇に少し目が慣れてきたのか、ぼんやりと壺が並んでいるのが見えた。
(どこかの貯蔵庫のような所?)

 やがて冷気に晒されている寝衣一枚の体は、ブルブルと震え始めた。縄で縛られている為どうにも出来ず、なんとか緩めようと手を動かしてみるが縄はきつく結ばれていて緩む気配はない。
 だからと言って大人しくしていても状況が変わるわけでもなく、夕鈴は諦めず手を動かし続ける。暫くすると、縄で擦れた手首に激痛が走りはじめた。
 寒さから睡魔が襲って来るが、その痛みのおかげでギリギリのところで意識を保つことが出来ていた。寝てはいけないと自分に言い聞かせ、手を動かしていたがやがて痛みも麻痺し意識が朦朧としはじめる。
(陛下……)
 薄れゆく意識の中で陛下を呼んだその時、ふいに暗闇の中に一筋の光が差し込んだ。
 
「お妃様?」

 声を掛けられ僅かに視線を向けると、人影が見える。どこか聞き覚えのあるその声の主に体を支えられ、縄が切られた。

「もう大丈夫ですよ」

 その声に安堵すると、そのまま意識を手放した。



 トクントクンと伝わる心臓の鼓動と心地よい揺れに微睡んでいた意識は深い眠りへ導く。

――陛下とは違うこの温かい腕は……父さん? 

「夕鈴はまた君のとこで寝てしまったか」
「ええ。まだ小さな夕鈴に看病させるなんて情けないわ」
「そう思うなら早く元気になった姿を見せてくれ。皆、君の元気な姿が見たいんだ」

 遠くで父さんと母さんの声が聞こえる。いつも看病疲れで寝てしまうと父さんが抱き上げて寝台へ運んでくれてたっけ。温かい体に心地よい揺れを感じ、いつも深い眠りに落ちて行く――


 ゆっくりと意識が浮上し、目を開けると見慣れない天井が見える。気付けば目には涙が溢れていて、手で拭っていると声を掛けられた。

「お目覚めですか?」
「あなたは……」

 声の主に視線を向けるとそこにいたのは、この間初めて会った官吏の恵紀鏡だった。
(何故ここに?)
 驚き体を起こそうとすると、体は鉛のように重く自由に動かす事が出来ない。状況が分からず困惑していると、恵紀鏡が説明を始めた。

「お妃様は薬を盛られて今は使われていない貯蔵庫に閉じ込められていました。そこを発見して保護させていただきました」

 何を考えて居るのか分からない表情で、ゆっくりと語られる真実。それは驚き半分納得半分な事実だった。

「今回の事はお妃様が陛下にふさわしくないと考えた祖父上の仕業でした。お妃様が居なくなれば、相応しい妃を娶られるに違いないと。私は偶然にもその会話を聞き、即座に救出に向かいました」

 家の隠密は優秀なもので大変でしたよと、苦笑しながら告げられる。

「あのままだと凍死してしまう所でした。祖父上に代わり謝罪致します」
「あなたは助けてくれました。私からお礼を伝える事はあっても謝罪される謂れはありません」

 そう言って謝罪の意を伝えられ、そんなに責任を感じて欲しくなくてそう笑顔で返した。

「そう言って頂けて恐縮至極に存じます」

恐縮している様子の恵紀鏡に、後宮の様子も気になり問い掛ける。

「所で皆さんに心配をお掛けしているでしょうから、早く無事を知らせたいので連絡してもらえますか?」
「申し訳ありませんが今は出来ません。今のままではお妃様を拐かした罪で恵家は族誅されるでしょうから、解決策を考えねばなりません。それに祖父上もまだ諦めてはいない様子です」

 すると申し訳なさそうに告げられ、それは大変だと思い暫くここでお世話になることにした。

「ではお妃様には申し訳ないのですが、家の隠密を欺く為にも暫く使用人としてお過ごしください」
「分かりました」



 屋敷を数人の使用人が行き来し、掃除などに大忙しだ。その中でも一際目立つ働きっぷりを見せるのは、茶色の髪を一纏めにして眼鏡をかけた少女だった。

「夕花、そこが終わったらこっちもお願いね」
「はいっ! ただいま」

 恵紀鏡の私邸で夕鈴はクルクルと元気に働く。彼が恵采を上手く説得し、解決策を見出すまではと頑張っていた。
 使用人の仕事はやはり自分に合っていると思うけど、陛下の傍に居たくて覚悟を決めて戻った後宮。大変なお妃修行も何日もしていないと、忘れそうで不安になる。
(いつ戻れるのかな……陛下、皆心配してるかな)
 ふと掃除の途中に寂しさがこみ上げてきて、空を見上げ物思いに耽っていた。

「夕花、そろそろ休憩だよ。早く片付けておいで」
「はい!」

 突然掛けられた声で我に返り、慌てて掃除を終える。皆の待つ部屋に向かうと賄が用意されていて、空いた席に腰を下ろした。

「最近の恵紀鏡様はお忙しそうね。政務室に配属が決まってからは、お屋敷にいる事が少なくなったわ」
「やっぱり冷酷非情の狼陛下と呼ばれるだけあって、人使いも荒いのかしら」

 食事をしながら交わされる会話を聞き、陛下のほうが大変なのにと憤りを感じる。

「自身は妖怪妃にべったりで、仕事を臣下にまかせっきりなんじゃないの?」
「そんな事ないです! 陛下は官吏以上に国の為にと忙しなくしていらっしゃいます!」

 それまでは黙っていたが、その一言で気付けば二人の会話に乱入していた。

「どうしたの? 夕花、まるで見て来たみたいに言うのね」

 突然の大きな声に、使用人達は驚き注目の的になった。あまり目立ってはいけないのに、しまったと思うがもう後の祭りだ。内心冷や汗をかきながら、ニッコリと微笑み瞬時に言い訳を考える。

「ここに来る前に飯店で働いていたので、色々な情報が入って来ました。今の御代になってから暮らしやすくなったと思いませんか? 私のいた下町では皆狼陛下のおかげだと感謝しておりました」

 部屋はシーンと静まり返り、誰も一言も発しない。皆はそう思ってなかったのかと悲しくなった時、誰かが呟いた。

「確かにそうだわ」
「うん、そうね。治安も良くなって助かってるわ」
「夕花の言う通りね」

 一人が口にすると皆口々に言いだし、辺りは騒然となりほっと胸を撫で下ろした。
 すると一人の女が近寄ってきて話し掛けられる。

「ねえ。じゃあさ、夕花は妖怪妃の話にも詳しいの? ほら、噂では妖術を使って後宮に返り咲いたとか、色々言われてるじゃない」
「え、ええそうね」
「あら、どうかしたの?」

 まさか自分の噂話を振られるとは思っていなかった為、明らかに動揺してしまった。その様子に気付いた女が問い掛けた時、使用人頭の声とパンパンと手をたたく音が響く。

「はい、皆そろそろ休憩は終わりよ。仕事に戻りなさい」

 もう終わりかと言いながら、皆自分の仕事へと戻って行く。助かったと夕鈴も席を立つと、使用人頭に呼び止められた。

「今日は恵紀鏡様がお戻りになられるそうです。その時に夕花を呼ぶように仰られていましたので、そのつもりでいなさいね」
「はい」

 今夜は色よい話が聞けるのだろうかと、期待しながら持ち場に戻ると掃除を再開する。


 夜が待ち遠しく中々時間が経たなかったが、ようやく夜になり人払いを済ませた部屋で恵紀鏡と向かい合っていた。

「お妃様。長らくお待たせして申し訳ないのですが、まだ打開策は見出せていません。何しろ忙しくて……もう暫くはご不自由おかけします」
「そうですか。では陛下もお忙しいのですね。分かりましたお仕事頑張ってください」

 期待した話ではなく内心がっかりするが、嘆いていても始まらない。陛下を支えられる妃になる為にはこんなことで凹んでいてはいけないと思う。だから今は自分に出来ることを頑張ろうと、一人気合を入れなおした。
 すると不思議そうに問われる。

「お妃様は変わってますね。そんなに会って間もない私を信用してよろしいのですか? ただ陛下との仲を引き裂こうとしているのかもしれませんよ?」
「何故信用してはいけないのですか? 本当に信用できない相手ならそんな事言わないし、聞かないでしょう」

 思ったことを伝えると、暫しの沈黙が訪れた。何かおかしなことを言っただろうかと顔色を窺うと、恵紀鏡はどことなく嬉しそうな表情を浮かべているように見えた。

「いえ。ただお妃様を使用人として働かせていますので、信用されていないかと思っただけです」
「私を匿ってくれる為でしょう? それにここの人達は良い人ばかりで問題ありません」

 如何したのだろうかと見つめるとそう告げられ、やはり五大家ともなれば人を信用できなくなるのだろうかと思う。安心させるように笑顔で答えると、恵紀鏡も微笑んだ。

 恵紀鏡の部屋を後にし、使用人部屋へ向かい一人回廊を歩く。彼の事は良く知らないが、助け出された時の父親と同じ温もりは信用できる気がした。
 夜空を見上げれは満天の星と、綺麗な月が目に入る。
(陛下もこの空を見ているのかしら)
 途中で立ち止まり物思いに耽りながら、今自分に出来ることは何だろうと思考を巡らせた。


つづく
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