月夜の君(つくよのきみ)後編
こんばんは~ (*´-`*)

今日は後編をお届けします!
リク主様が「HAPPY版かぐや姫」と名付けてくれました後編もお楽しみ頂けると幸いです m(..)m
よろしければどうぞ~

もう瞼がとじそうなので予約投稿でおやすみなさいZzz



「はあ……早く夕鈴姫に会いたい。何故王宮はくだらない権力争いばかりなんだ」
「この間会って来たでしょう! あの時の遅れを取り戻してから言ってくださいよ」

 政務室で机に突っ伏す帝に、少し癖のある茶髪を一纏めにした側近は厳しく言い述べる。抱えていた大量の書簡を机に置く。
 帝はノロノロと顔を上げ、書簡の山に視線を向ける。すると上に一通の手紙を見つけ、慌てて起き上がった。

「李順! これは……」
「ええ、その夕鈴姫様からの手紙ですよ。早くそれを読んでこの山を片付けてくださいよ」

 嬉しそうに手紙を読む帝を眺めながら、側近は深いため息をついた。
(その夕鈴姫が早く後宮に入ってくれればいいんですがね)


 帝が初めて李翔として夕鈴姫と顔を合わせてから、三年の月日が流れていた。
 その間に帝にも縁談話は山のようにきていた。だがそれらを全て突っぱねるほど、帝は夕鈴姫を想っていた。

 二人は度々文を交し合い、時に李翔として会いに行く。
 夕鈴姫は最初のイメージと違い、好奇心旺盛な姫だった。いつも帝の土産話を目を輝かせ聞いていた。

「その調子でよく屋敷に篭っていられたな」
「だって……以前はそんな楽しい事が外にあるなんて、知らなかったんですもの」

 偶にやってくる帝との逢瀬を、いつも夕鈴は心待ちにしていた。


 そんなある日。届いた文には涙の痕がありそれに添えられた一枚の紙には、岩圭から夕鈴姫の様子がおかしく月を見ては泣いている事があると書かれていた。
 帝は居ても立っても居られず、馬に乗り夕鈴の元に駆けつける。驚く岩圭には目もくれず、帝は夕鈴姫の部屋に押し入った。

「李翔様! どうされました?」

 驚き振り返る夕鈴姫は美しさは変わらないが、前回会った時より弱々しく見えた。

「夕鈴姫が泣いていると聞いて、慌てて来たんだ。何に憂いているのか教えてもらえないか?」

 問い掛ける李翔に、夕鈴姫はあまり隠し通せないと思い真実を告げることにする。

「李翔様。はじめはまだ嫁にいける身ではないと告げ、今まで待ってもらいました。でも実は私は月の者なんです。もうすぐ迎えがやって来て月に帰らないといけません。なので嫁入りは出来ないんです。今まで騙してごめんなさい」
「夕鈴姫。実は私も隠していた事があるんだ。だから謝らなくてもいい、私はただの貴公子じゃない帝なんだ。だから兵力を使い貴女をその迎えの者から守ろう」

 辛そうな夕鈴姫に帝はそう告げるが、夕鈴姫は晴れない表情のままだった。


 帝は王宮に戻り月からの迎えを阻止する為の準備を整えた。迎えの来る十五日には沢山の兵を連れて戻る。
 屋敷中隙間もないほど兵で埋め尽くさせ、帝は夕鈴姫と部屋に篭った。
 
「とうとう今夜か……」
「はい。もうすぐお別れの時がやってきます」
「絶対に阻止してみせる。だからそんな事を言わないでくれ」

 帝が強く抱きしめると、夕鈴姫は一筋の涙を流す。
 それは喜びの涙ではなく、悲しみの涙だった。

「少し冷えてきたな」
「帝、月がいつも以上に輝いて見えるぜ」

 帝がポツリと呟くと夕鈴姫はビクリと震え、屋根裏からは声が聞こえた。

「浩大か。どうだ様子は?」
「んー、今の所月が綺麗なこと以外は問題ないよって……急に空が眩しく光り出したぜ」

 その言葉を聞くと夕鈴姫は涙を流し、帝を見つめる。
 屋敷の外はガヤガヤと騒がしくなってきていた。

「李翔様……いえ、帝。あなたが本当に私を必要だといって下さるなら、絶対にもう一度戻ってくると約束します」
「帰らせないと言っているのに……」

 夕鈴姫は懐から取り出した包みを手渡し、帝はそれを不思議そうに眺めた。
 
「これは?」
「この間月の使いの者が持ってきた不死の薬です。帝に私の代わりに持っていて貰いたくて……」

 帝が口を開こうとした時。突然外に通じる戸が全て開き、眩しい光に包まれる。帝は目の前を連れられる様に出て行く夕鈴姫を、見ている事しか出来なくなっていた。

 止めたいのに体は動かない。ただ連れて行かれるのを見ている事しか出来ないもどかしさに、帝は歯を食いしばり
力を込める。すると何とか歩けるようになり、後を追う事が出来た。
 外には雲に乗った人々が立ち並び、王と思われる男が夕鈴姫に声をかけた。

「やっと我が元に帰って来る日がやってきた。さあ、早くその羽衣を着てこちらに来なさい」
「はい……」

 使いの者が夕鈴姫に羽衣を着せてやる。その様子をそこにいる者誰もが、ただ見ている事しか出来なかった。

「帝、約束は守りますから。それに父さん、青慎。今までありがとう……」

 天蓋付きの車に乗せられる直前、夕鈴姫は振り返り泣きながら笑顔を見せた。 
 雲と車が月に向かい始めると、全員が自由に動けるようになって辺りは闇に包まれる。

「絶対に帰らせないと言ったのに……」

 帝は夕鈴姫に貰った薬を握り締め、ただ悔やむ。
 岩圭と青慎も、事前に夕鈴姫から渡されていた手紙を握り涙していた。

 夜空を見上げると、夕鈴が戻ったからだろうか、月は一際大きく輝いて見える。
(夕鈴姫――)


 その日から更に三年の時が経った。
 帝は夕鈴姫の言葉を信じ、未だに妃を娶っていなかった。

「帝! いい加減にあの姫の事は忘れ、妃を迎えてください。もうこれ以上は縁談話を抑え切れませんよ。聞いているんですか!」
「まあ、そうカリカリするな李順。政務はやっているから良いだろう。それにいざとなったら晏流公がいる」
「何を言ってるんですか!」

 書簡から目を離す事無く答える帝に、李順は諫める様な視線と口調で続ける。そんな二人の元へ一通の文が届けられた。

「失礼します。李順様、何やら急ぎの文が届いたようで預かり持って参りました」

 入り口で拱手し告げる補佐官に、李順は近付くと文を受け取る。差出し人を確認すると岩圭と書かれていた。
 李順はすぐに文を広げ中身を確認した。するとそこには一言、こう書かれていた。

『夕鈴姫危篤』

「これは……」 

 月に帰ったはずの夕鈴姫の危篤の知らせに、李順はどういう事かと思案する。書簡に目を落としていた帝は、李順の様子がおかしい事に気付き声をかけた。

「李順どうした?」

 その声に思わず李順はビクリと体を揺らす。だが平静を装い、なんでもないような顔で振り返った。

「いえ。大した事では有りませんでした。また後日お見せしますよ」
「お前のその様子はただ事ではないだろう。何年の付き合いだと思っている。早くそれをよこせ」

 騙し通せそうにないと悟った李順は、しぶしぶ文を手渡す。それを受け取り中身を見た瞬間、帝は固まった。

「李順、これは本当か?」
「分かりません。だから調べてからにしようと思ったんですがね」

 李順はため息をつき、視線を上げると帝は文を握り走り出したところだった。

「浩大! きっと帝は岩圭の屋敷に行くつもりでしょう。すぐに追いかけなさいっ」
「はいよー」

 窓に向かって声を掛けると返事が聞こえ、浩大は帝を追って行った様だった。

「罠じゃなければいいんですが……」


 帝はあの時貰った不死の薬を懐にしまうと外套を羽織り、馬に乗ると急いで駆けて行く。
(夕鈴姫は約束通り帰ってきたということか)

 夢中で馬を走らせると、ようやくたどり着いたのは、日の暮れかけた頃だった。
 戸を叩くと出てきた使用人は驚き岩圭を呼ぶ。帝は待っていられないと外から回り込み、夕鈴姫の暮らしていた部屋の戸を両手で大きく開いた。
 そこには部屋の中で寝込んでいる夕鈴姫の姿があった。あんなに輝いていた薄茶の髪はパサパサになり、肌艶も悪く顔は青ざめている。

「夕……っ!」

 名前を呼び駆け寄ろうとした瞬間、帝は胸に衝撃を感じる。下に視線を向けると、胸に矢が刺さっていた。
 そのままその場に倒れこむ。
 音で意識を取り戻した夕鈴姫が見たものは、ずっと逢いたかった帝が矢に貫かれ倒れている姿だった。

「み……かど……」
「夕……り……ん」

 夕鈴姫は思うように動かない体を必死で動かし、帝のそばに這っていく。帝もまた立ち上がることも出来ず、思うように動けない体で必死に近寄った。
 やっと触れることの出来た夕鈴姫に、帝は震える手で懐から不死の薬を取り出し飲ませようとする。
 だが夕鈴姫はそれを拒んだ。

「し……んで……はだめ……」

 夕鈴姫は、帝に薬を飲ませたかった。必死で伝えようとするが、上手く言葉が出てこない。
 そうしている内に外が騒がしくなり、足音が近付いてきた。帝は夕鈴姫の真意が分かったのか、自分の口に薬を入れると側にあった水を口に含んだ。
 それを見て夕鈴姫がホッとして笑顔になった。と思ったら唇を塞がれ薬を流し込まれる。夕鈴姫は思わず飲み込んでしまった。すると夕鈴妃はみるみる艶が戻り、出会った頃のように元気な姿になっていた。

「夕鈴姫!」

 岩圭、青慎、使用人らが襖を開けると、そこには矢に体を貫かれ息絶えた帝を胸に抱き、泣き続ける夕鈴姫の姿があった。
 誰も声を掛ける事が出来ず、ただ呆然と立ち尽くす。

「とりあえず何とかしてやってくれない? いつまでもこのままじゃ駄目でしょ」

 突然聞こえたその声に我に返った岩圭らが振り向くと、小柄な幼い男が立っていた。
 帝から離れようとしない夕鈴姫を引き剥がし、男は矢を抜き布団に転がすと部屋を出て行った。夕鈴姫はその傍らで月を見上げ涙を流していた。

「こんな事なら戻って来なければ良かった……」

 止め処なく流れる涙を拭うこともせず、夕鈴姫は月を見上げ続ける。何か聞こえた気がして帝の顔を覗き込んだ時、その涙の雫が落ち、帝の唇に吸い込まれていった。
 そのまま帝に視線を向けていた夕鈴姫は、信じられないものを見る。真っ白だった帝の顔に血色が戻ってきたのだった。

「帝……?」

 恐る恐る声をかけると、ゆっくりと瞼が開いていく。

「夕鈴姫……?どうして泣いているんだ」

 目を開けた帝が優しく問い掛けると、夕鈴姫は口を開けたまま動かなくなった。
 それを不思議そうに眺める帝に、我に返った夕鈴姫は抱きつき問い掛ける。

「帝……どうして?」
「何が?」
「それは私が説明しましょう」

 何が起こったか分からない二人に、後ろから声が掛けられる。二人が振り返ると、そこには月の使者が立っていた。

「まだ月の者である貴女が不死の薬を飲み、男はそんな貴女の涙を飲んだ。それで息を吹き返したのですよ」
「それは私の涙が薬になったって事ですか?」

 その説明に頭の回らない夕鈴姫が問い掛けると、使者は是という。そしてそのまま続ける。

「普通なら月に戻ると記憶は消えてしまうのに、貴女は違った。ずっと男を想って泣き続け懇願する姿を見て、月の王は二人に試練を与えて見ることにした」

 夕鈴姫を病気の状態で戻し、帝の地位を弟に譲らせたい連中をそそのかし、行動に移させる。全ては月の王が与えた試練だったと使者は告げた。
 その試練を乗り越えた二人の願いを叶える為、特別に夕鈴姫に人間になる薬を与えるという事だった。
 二人は抱き合って喜んだ。

 こうして人間となった夕鈴姫は帝に嫁ぎ事ができ、一生幸せに暮らすことができましたとさ。

おわり
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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これ、某所でちょっと、コメントしにくいのでここで…

夕鈴帰っちゃったよー、来世なの?
とか思ってたら大どんでん返しでした!
良かった〜。
今生は結ばれず来世でネタって何度か読んだことあるんですが、やっぱり納得いかない!ってなるんです←わがまま

おこぼれごちでした!
まんまるこ様
コメントありがとうございます(o^^o)
どちらでも嬉しいです!
一回帰らせたけどやっぱり今世で結ばれて欲しくて、大どんでん返しになりました〜(*゚▽゚*)

やっぱり今ですよね(*≧∀≦*)
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yawayawaほっぺ様
コメントありがとうございます(o^^o)

素敵って言ってもらえて嬉しいです!
ハッピーエンドで終わらせたかったのでこういう形になりました(^o^)
今はぶった切ったアレ書いてます!日曜か昨日公開したかったんですが、書ききれなかったので今日書き切れればいいなあって(*^^*)

またほっぺさんのお話も待ってます(≧∀≦)
 


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