君を2
黎翔 社長24歳
夕鈴 20歳
李順 秘書27歳
克右 運転手兼ボディガード30歳
浩大 スパイ兼ボディガード26歳
張元 珀家お抱え主治医
柳 義広53歳 常務
柳 経倬24歳 常務の長男
秋香 珀家家政婦



「克右の報告はまだか――。もう1週間経つが」

黎翔は苛立ちを隠さずに呟く。

「社長。仕方ないでしょう、克右は探偵向きじゃないので……。そういう仕事は浩大の方が向いていると思いますが」

李順は手元の書類から目を離すことなく答える。

「まあ最近は夕鈴も少し表情が出てきたし、焦らなくてもいいが時間がかかるな」

「それより早く仕事してください。今日も早く帰って彼女と食事を取るんでしょう」

「ああ、そうだな」

早く帰るためにとにかく仕事を捌いていく。





(今日は早く帰れたな。最近の夕鈴は驚く顔はするようになった事だし、びっくりさせてみよう)

そっと部屋に入ると夕鈴はじっと外を見つめていたので、気配を消して近づき後ろから抱きついてみる。

「っ!!嫌あ離して――っ!!いや―――!!!」

「ごめん夕鈴。僕だよ落ち着いて」


ずっと叫びながら逃げようと暴れ、涙を流す夕鈴から手を離すと部屋の隅に逃げ、蹲って震えている。

「夕鈴――」

声をかけると、ビクッと体を震わせ漸くこっちを見てくれた。
が、怯えた目で此方を見て再び逃げようとする。

「李順。張元を呼んできてくれ」

パタパタと廊下を走る音が聞こえて、張元が入ってきた。

「どうされました?とりあえず薬は持ってきましたが、この状態では飲ますのは難しいかと」

薬を差し出されて受け取る。

「これを飲ませばいいんだな」

ゆっくりと近づいて行く。

「夕鈴、ごめん――」

怯える夕鈴を捕まえて、無理やり口移しで薬を飲ませ落ち着くのを待つ。





「あんなに怯えるとか、社長は何をしたんですか」

「――ただ驚かそうと後ろから抱きついただけだが」

ヒヤリとした空気が流れる。

「何が原因か分からないので、当たり障りないように接するように言いましたのに」

2人に責めるような眼差しを向けられ居たたまれなくなって部屋を出る。
(ただちょっと驚かせたかっただけだったんだがな。また最初からかな…)

がっくりと肩を落とし、夕鈴の様子を見に行く。

ベットで静かに寝ている夕鈴に近付いて行く。

「せ……しん……。……うさ……」
夕鈴の目から涙がひとすじ流れる。

「夕鈴……。君に一体何があったんだろうな」

すべてはまだ謎のまま――。


***


「汀 夕鈴20歳。1ヶ月前から家族より捜索願が出されていました。今のようになった原因までは調べられませんでした、申し訳ありません」

「まあいい、後は自分で読む」

(汀夕鈴:レストランでウエイトレスとして働く。父:岩圭48歳市役所勤務と弟の青慎17歳と三人暮らしで、母親は早くに他界。極度のブラコンで家族を大切にしていた。父親は酒とギャンブルにのめり込みすぎて、ほとんどお金が残らないので夕鈴が家計を支えていたか――)

「みんなに人気だったみたいですね。聞く人聞く人みんな良い子だ、心配だって言われましたよ」

「そうか……」


あれから夕鈴は何か思い出したのか毎日塞ぎこんでいる為、ほぼ張元に任せているが原因もわからないので対処のしようもない。

少しでも精神安定になればと、毎日カモミールの花を贈っている。

「やはり原因まで調べようと思ったら浩大か。李順……」
「浩大は社長の縁談除けの為に走り回っているでしょう、今は無理ですよ」

そう言う李順に冷酷な視線をむける。

「それをどうにかするのがお前の仕事だろう」

「分かりました、考えておきます」
深いため息をつきながら、頭を抱える李順に克右は哀れみの眼差しを向け「李順も大変だな」と呟いた。


「李順、今日は帰って夕鈴の様子を見てくるから明日までに考えておけ。克右帰るぞ」

「御意」






ドアをノックして入ると、カモミールの花に囲まれて座る夕鈴がいた。

花の妖精の様な、可憐な姿に庇護欲が湧く。

「夕鈴、花を見てたの?」
優しく声をかけると、視線を向けてくれる今は近づき過ぎなければ怯えられなくはなった。

「夕鈴は花が好き?」
「……見てると、落ち着く気がする……」

「そっか、この花の花言葉はあなたを癒す、苦難に耐えるだからぴったりかなって思って……よかった。あ、私が淹れるからお茶にしようか」

カモミールティーを淹れ、蜂蜜とミルクでミルクティーに。

「美味しい?」
コクコクと頷いて、飲む姿も可愛くて早く笑顔が見てみたいと思う。

(今はまだ薬が手放せないけど、早く飲まなくてもいい生活に戻したいな)

しばらくすると夕鈴は目を擦り始める。

「私は部屋に戻るから、ゆっくり寝ていいよ。お休み――」

夕鈴がベットに移動するのを見届けて、部屋を後にした。
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